カイツブリの営巣について伺う。鼈に乗っ取られ紆余曲折のち断念した模様。米村氏招きスーク・トリオの大公や冷や汗のピアノソナタニ長調をでくのポーズで聴く至福の午後。おやつはドーナツならぬマーラーカオ。

関門として立ちはだかる「サイチェン」。党と関われば即呼び出される旨をよくよく諭される。子は「おはようございました!」と言いながら、誰彼構わず付いてゆく。そんな経緯で赤い屋根の家で茶を馳走になる。庭ではモズが鳴いている。

緑眼輝くオニヤンマが巡回する店で土・炭など求め、器に配置し心臓の形で鈴音を響かせるものを放つ。人参と麦飯がよいようだ。途上澄んだ水色と漆黒の軸に、網貫入様の透き通る翅にて、中空を音なく進むものあり。南宋官窯の青磁輪花鉢を連想させるそれはシ…

圧縮をかけた言葉の文字の並びから溢れる波動を瑞々しい鈴の音を介し届ける人あり。駅はあるが電車のない言葉通じぬ地での荒療治により一時回復。寸法ぴったりのお下がりを山ほどいただく。子らが食べるはエビばかり。

放られて氷上に散るどんぐりを目掛けかけ寄り滑りながら次々と丸呑みしてまた一目散に池に戻って行く鴨。3匹の小さなぶたが福々と笑っている置物をいただく。製本のひどさを謳われながら内容で黙らせる方にお会いする。目を覚ました途端手当たり次第に物投…

「しかし、どうして人間は放っておくと三代目になってしまうのか」ハンチング帽を三つ重ねて被っている三代目から1mmの100分の2についてうかがう。他のみなさんは「網走番外地」に集中している。「三代目の生き方は、資源浪費も環境破壊もしない、共存する安…

動じず飛び込み我が道ゆく子。「どこに行ってもやっていける」の太鼓判で更に突進。終日けらけら笑ってる。思わぬ問い。「芸能人に1日なるとしたら誰?」昨今の芸能に疎い我、苦し紛れにいとしこいしの名をあげる。

投函されない手紙を記すちょうどその頃、来翰あり。それは光そのもので、手にすると鈴の音がかすかに響く。子は桐箱の開閉に余念がない。「食えなんだら食うな」「死んだら死んだでええ」 むにゃむにゃ言っては笑う。

建物に入るやいなや子らに取り囲まれ矢継ぎ早に頬を揉まれ靴のまま固まる我が子。すぐに溶け180度を駆け巡りくつろぐ。即興のR&Bでみながサザエさんを唄う頃熟睡し鶴になりきって飛ぶ白鳥を見逃す。

1日。炎立ち薪、炭となる炉を囲み振る舞われし彩を子は次々に頬張りて後、畳と縁側を止めどなく往来す。薬尽きぬ瑠璃の瓶は白鳥となり飛び立つ。早足で向かうも、土蜘蛛すでに終了。2日。乗換え3度の末迷い、走る消しゴムをいただく。着地点で子は人々の…

流れるように揺れる草、あらわれては消える気泡。そのささやかな知らせに聞き入って後、部屋の写真という写真(空や木や草や石や水)に目を凝らしている。かつて採集した、時が、子の中で動き出し、残響を増幅させる。いつか廻廊を昇りあらゆる時物を慈しめ。

…幼い魂の奥底まで喰い入ってこれを呼びさまし、育て、希望を持たせ、大人になってもまだ執拗に喰いさがっていようというためには、これこそたった一枚の切札があるだけ、それが「人的感応」である。 (武井武雄『本とその周辺』より)

薄曇りの午後、物語が静かに進む。がらがらどんを脅すトロル。トロルを倒すがらがらどん。淡々と紡がれる言葉がうねりを持って迫り、こちらの何かを巻き込み、大きな力で包む。穏やかな声と吟味された言葉の凄みに慄える爽快なひととき。

映写室の闇駆け回りどんぐり食む間に滝が止む。遠近法を進まんと濯がれた石畳を踏むやいなや子芝に飛び滑り落ち縁石に額穿たれ庭園に朱を捧ぐ。

ブランコを顔で着地した小さき人と屋根のないホームを降り田の道をゆく。稲を手で刈る姿に見とれるうちに、18年前立ち上がった開発計画に10人で抵抗した話などをうかがう。市の人口12万9027人のうちプロは20人。大変な労力を要し金にならない。未だに経済成…

座った途端に立ち上がり彼方へ突進し戻ってきて改めて座る。フォークで刺した物体を握りつぶして口に運び、そして立ち上がる。突進し戻り座る。物体を匙ですくい口の手前で逆さにしてこぼし匙だけを口に入れ、それからまたどこかへ突進する。多忙な彼が昼寝…

空洞の頭蓋内で羊が安らかに草をはむ14時。バラに覆われた牢獄を聴く。1919年から造られしトルソーを探し、昨夜その誇り高き工房の所在を確認。家のすぐ目の前であった。蝋燭の元は暗く、魂柱も倒れたまま。虹色の時間を犠牲にし、息を止めたまま砂利を飲み…

甲高い喧騒の中を漂う低い声に振り向くと赤い鳥がいる。ぼそぼそと語り続け、たまにぴょーっと鳴く。 文庫本をぱたぱた羽ばたかせると子がいつまでも大笑いを続ける。 すごい筆圧で記された氏名に胸を打たれる。書いた本人の声はか細くてほとんど聞き取れな…