2008-04-01から1ヶ月間の記事一覧

準備

感情を無くした部族と2年間過ごした人に会いに行ったことがある。その部族が特殊なわけではなく、極限の状態に順応するために人間に備わっている能力だと思う、とおっしゃっていた。2歳の頃、とりあえず家を出た。今ここにいる、そのことが不思議でならず…

たんぽぽ

たんぽぽをたんぽぽとして意識できるうちに確認したくともたんぽぽはもうすでにたんぽぽではないのかもしれない。それでもたんぽぽがたんぽぽのままでいるような気がしてならない。あの席、ペソアっぽいね、と、奥のほう、光あたらぬ場所を指し坐りたがって…

修理屋

落ちて大破した。壊れたがっていたのだと思うことにした。修理屋の意外な言葉は、なつかしくもあった。大丈夫ですよ、直ります。歩く自分の姿を窓から眺めているが、窓から眺める自分の姿には気付かないまま、軽石ばかりの浜辺を歩きました、と、傷だらけの…

鶯がパルチザンと鳴いている。七色のどら焼きをいただきながらリハビリ。ランニングシャツと麦わら帽子が似合う風格となるまでの猶予は放棄され、それでも、洗濯物が干したままなので大丈夫、と言う人もあったが、10m先の著しく困憊した背中に追いつけな…

ビスケット

行く先々で電灯が点滅している。バンを見かけるたびに目を光らせていたあのハイエース評論家はどこに行ったのだろう。「彼らは歌いながら突然」5月の空に、アマリア・ロドリゲス。「壁に銃先でおかしないたずら書きをしてしまった」 作品が誰かに強い影響を…

レミング

作品を頼まれていた。他の人の目には触れることのない場所に掲げる、その人のためだけの、小さな、とても、静かな、とても。小学生の頃書いた物語を、レミングハウスの方にお会いして思い出す。内容はあるレミングの日常の風景を描写したもので、行進の直前…

靴下

松濤美術館で中西夏之新作展、GALERIE ANDOで二木直巳展、RAT HOLEでLEE FRIED LANDER「桜狩」、ART・ IN・GALLERYで新宅睦仁・樋口師寿「くたばれ東京藝大」展、NHKホールでメシアン「トゥランガリラ交響曲」、YUKARI ARTで南条嘉毅展、ZAIMで日本とセルビア…

ぬるま湯

席に満ちた人々がまなざす先には黄緑色の奏者がいる。黄緑色の奏者を見ている自分もまた席に満ちた人々である。ぬるま湯を飲んだくれてはひっくり返る。目の前の人が言うには、その人の目の前の人はものすごい悪人なのだそうだ。黒椅子が使用中止中のルネッ…

不知

留守が続きひと月遅れて入手した戸村浩氏のパンフレットから。 「未知とは決定的な存在であり、不知は我々の認識の血の騒ぎのためにある。不知は知るために存在するのではなく、既知の反語として存在するものでもない。未知はそれを認識することにより既知に…

焦点

グランドピアノの下からよたよた踏み出す。その脇を颯爽と駆け抜ける東方力丸氏。記号の解釈の表出は、何と相対させるかで全く別の物となる。善悪の判断もまた。一枚のガラスによって展開する反射と透過の景色。目を凝らせど焦点はずれ続ける。砂だらけの悲…

傾斜

渡した途端に返された一冊。曰わく、知っていることしか書かれていない。なるほど、「人肯當下休、便當下了」 目的も自覚もないえぐりあいの後、問いは高笑いではね返され、1、2、3、で、赤と青と緑。縮んだ時、傾斜はより強くなる。目を閉じることがまだ…

矛盾

写真美術館でマリオ・ジャコメッリ展。あらゆるものが孕む矛盾を、矛盾のまま静かに現前する手法。狭い見解で判断をくだし解決する、その単純さから遠く離れた心地よさ。工房親で田中隆史展。焼き物の作家さんによる平面での実験的な試み。吹き付けた色の痕…