2012-01-01から1年間の記事一覧

「私はまた自分を忙しくする作業にとりかかる。あんまり忙し過ぎて、自分がいかに惨めに失敗しているかを見なくてすむための作業にね」(W・サローヤン『パパ・ユーアクレイジー』伊丹十三訳) ズボンを履きなさいと日々言われる。散歩中の鷹匠を横目に運転…

「How does it feel/How does it feel/To be on your own/With no direction home/Like a complete unknown/Like a rolling stone?」流れてきた曲に抱腹。いや、頓服。満腹、切腹、立腹、征服・・・そうそう、感服。近々達磨が大量に来るという予告を受ける。

初診で断言。「ご主人、この人には薬も治療も必要ないどころかそんなものは逆効果です。この人は閉じ込めてはいけない。問題があるとしたら、あなたの狭い考え方です。この人を解放すればすべて解決します」そして私に向かって「あなたはどんどん活動しなさ…

ドアをこじ開けようとしながらその隙間からすごい形相で何か言っている。「オマエノセイダオマエノセイダオマエノセイダ」「ドウシテクレルドウシテクレルドウシテクレル」シャイニングって映画知ってる?「シラン」今度見てみて。あなたが出てる。

植物に与えんと窒素リン酸カリウムマグネシウムマンガン亜鉛ほう素の混合物を入手。「本来の用途には使用しないでください」という注意書きにより投与できず。関せず草花日毎伸び。「身動きできぬほどの不自由さがあるから、それを逆手にとって内圧を高め、…

咀嚼する装置を嚥下し身を内から砕き痩せ細った母は前より顔色も滑舌もよい。「弱るとみんな優しいわねぇ」 相方が小学生から通い続けているたこ焼屋でたこ焼と水とスイカ。バスを待ちつつ高野豆腐ときゅうりと卵焼とかまぼこの海苔巻。「『イ・サン』が始ま…

口々に祝福の言葉を贈られる。母も義母もひたすら耐えて耐えて耐えた。「どーんと構えて我慢しいや」 顔殴られようが頸動脈圧迫されようが共に笑って生き延びよう。

ここ数日で何年も過ぎた。暑くなったら鍋をしよう。「10回言うと叶います。11回はあきまへんで」 樋を伝い瓶に溢れる雨をざぶざぶと菖蒲にかけるように、待つ前に待ち人来たりて氏揃い。混んだ車両で学生がペリクレスについてしきりに話している。

緑に黄色を重ねて、石橋のひびを飛び越えろ。フルコースと手品で笑い転げる人々と共に。息継ぎはいずれできる。今は手を叩き、泳ぎ切れ。すべてを飲み込んで笑い飛ばして走れ。倒れるまで進め。

ネクタイに革靴で畏まって挨拶し姪と二重跳びをしたり甥や父を嗜めたり、5月に家族となる人は一言で言うとタフだ。かいがいしく握り飯やサンドイッチを作っては包みが開けずらいだの具が苦手だのと文句をつけられている。

お飲みなさいとアロエをいただく。お持ちなさい糀をいただく。大根の花をいただく。あしたばをいただく。譜面をいただく。テハロハテハツツロロハチツレチ。凧を揚げる。鰤の解体を見る。行く先々で「春の海」。

指から外すとばらばらに崩れてしまう指輪の修復を試みる店主の傍らで黙々と解くうちに雨が上がる。橋の上で川底をのぞきこむ互いの微弱な声は意味として届く前に霧散してしまうから音揚を何度も拾い上げなくてはならない。渡されたアルマイトの箱には握り飯…

トラックスーツを検討しつつオブリガード。次々と出てくるワニにビール味のビール。空中で10分ほど待機。人々の握力を測定してまわる。「もちろんルッターはいつも怒ってばかりいたのではありません」(矢内原忠雄『続 余の尊敬する人物』より)

辛うじて合格。無謀だ遭難者の典型例だと非難されつつ病院へ。大事な時期ですから慎重にと念を押される。怒鳴られたり呆れられたり励まされたり。庭には二把ニワトコ(接骨木)。

修行と練習の違いについて。そして午前0時少し前に贈られた、「押忍失礼します」で始まり終わる、冷静で大仰で暖かい不思議な抑揚。

酢飯に山盛りの干瓢とガリとわさび。そして甘く熱い卵焼き。お任せで出てきたそれらと格闘しながら、散弾銃についてうかがう。それから、たくさんの、ありとあらゆる種類の金魚。「日が暮れて川を見て橋の上を電車が通る」

「生まれてから80年経つと、言ったことすぐ忘れちゃうのよ、ごめんなさいね、脳も体も怠けると衰えるから、うんと働かせないとね、天から授かった体を大切にしてね、人生を大切にしてね」

後ろ足を棒にして3と6を繰り返す。離さないから離れるな。はい。庭で何を育てよう。怒りが跡形もなく蒸発しぐっすり眠る。朝、ポストに「秘伝」(武の医学特集)。

おぞましい響きでしかなかった、背筋を凍らせるその言葉が、その人から発せられた途端、暖かい光となってこちらを包み込む。その人の前ではただ安心して耳を澄ましていればいい。その小さな声が、呪いをひとつひとつ解いてゆく。

正面から切られ目が眩む。書物を8冊購入、計80円。慌てて印を彫り血がにじむ。ブルーハーツを歌ってもらう。手袋を選び50km/hで進む。コブラツイストを教わる。「残忍性の裏には必ず感傷的なものがある。これは補足の法則だ。」(ソルジェニーツイン『収容所…

初対面の方から唐突に諭されたことがある。「一緒にいたり結婚したりは、好きな相手とするものです!」「え、そうなんですか?」「当然です!」 バックドロップと100人組手と金塊と銃弾で「当然」を祝う雪の日。

のぼせなさんなと釘を刺される。糸の切れた凧となり贈り物を探す。お見舞いか大量のレトルトが届く。手渡された古刀、新刀、新々刀を観賞し、座敷で燕返しや達磨落しに見入る。大きな革ジャンにくるまれる。

「あとしばらくの我慢です、安静に」と念を押される。神妙に頷き、荷物を両手で抱え退室しようとすると笑いが起こる。「言ったばかりじゃないですか、動かすと危ないですよ」「あ、そうか」 正座をする。上体はまっすぐのまま、静かに両つま先を立て、右足を…

「どんな人?」「(謙虚で豪快で無謀で真摯で緻密で頑強で現実的で真面目で暖かくて冷静で無邪気で繊細でふざけてて厳しくて理知的で優しい)すごい人」

突然武道。突然就職。突然個展。突然大切な人。前腕を床につけ、膝頭の外側に肘付近をつけ(こうすると左右前後の敵に腕をとられても倒されない)、上体を低く倒して額ずきうやうやしく礼。「ありがとう」

後ろ足の踵は紙一枚、床から浮かせる。所作のすべてが厳密で、曖昧や無駄が一切ない。貴重で贅沢な時間。それとは別に、やり残したことがまだあった。「どうしたらできるかな」「考えちゃだめです。何も考えなければできますよ」こともなげに言う彼女。

通りがかりの方々に助けてもらった後、搬送先でレントゲンを見ながら。「きれいに納まってますね」「偶然居合わせた整形外科の先生が適切な処置をしてくださいました。そんなことあるんですね」「いや、そんなことめったにないですよ。念の為しばらくは安静…

UPLINK FACTORYで三宅流特集。初期の16mm作品『時間軸のゆらぎ』『神経節衝動』『蝕旋律』『白日』を監督自ら映写機で上映。3者トークで三宅節を聞く。「パースペクティブにパースペクティブをねじ込む、ある種の」「瞬間が永遠の、ムイシュキンの時間を」…

記念の会。いろいろな方が遠方からお見えになっていた。主役は終始ぴりぴりし、慣れない裏方でばたばたしたけれど、暖かで素敵な一日だった。佐藤静山氏に演奏をお願いして「手向け」を贈る。哀しい旋律を祝いの席に響かせる。

駅前で偶然会った知人の案内がてら竪琴の店にお供する。竪琴ばかりの店内でしばし竪琴を眺める。仕事は果てしなく続く。職場の先輩とコーヒーを飲みながら「やってもやってもきりがないね」「そうですね」と笑う。