2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧

流れるように揺れる草、あらわれては消える気泡。そのささやかな知らせに聞き入って後、部屋の写真という写真(空や木や草や石や水)に目を凝らしている。かつて採集した、時が、子の中で動き出し、残響を増幅させる。いつか廻廊を昇りあらゆる時物を慈しめ。

…幼い魂の奥底まで喰い入ってこれを呼びさまし、育て、希望を持たせ、大人になってもまだ執拗に喰いさがっていようというためには、これこそたった一枚の切札があるだけ、それが「人的感応」である。 (武井武雄『本とその周辺』より)

薄曇りの午後、物語が静かに進む。がらがらどんを脅すトロル。トロルを倒すがらがらどん。淡々と紡がれる言葉がうねりを持って迫り、こちらの何かを巻き込み、大きな力で包む。穏やかな声と吟味された言葉の凄みに慄える爽快なひととき。