著者

一度目を通せば諳んじたため、書物の所有にまるで執着しなかった人物が、唯一、何度も読み返していた本がある。聖書でも広辞苑でもない。読め、と渡されて仕方なく開いた頁に並ぶ、削ぎ落とされた日本語を必死に追うが、解読できずにいた。それが今になって、着地をし始める。昨日、その本の著者にお会いした。