山椒魚

「先生、どうして、『山椒魚』に筆を入れるなんてことなすったんですか?」
「あれはねぇ、もし許されることなら全部書き直したいんですよ」
「どうしてですか?」
「だって、あれじゃ出られないもの。あれじゃ、どうしようもないもの」
「あれは出られないから『山椒魚』だと思ってました」
「そうかねぇ、あれは出られないから『山椒魚』なのかねぇ。あれは出られなくていいのかねぇ」
「いいかどうか分かりませんけど、出られない山椒魚が『山椒魚』なんじゃないでしょうか」
「そうだねぇ、あれは出られなくてもいいのかも知れんねぇ」
さだまさし「噺歌集V」より)