ヴラジーミル  いずれにしろ、確かなことは、こうした状態では、時間のたつのがまことに長く、したがって、われわれは暇をつぶすのに、なんといったらいいか、一見合理的に見えるがすでに習慣となっている挙動を行わざるをえない。それは、われわれの理性が沈没するのを妨げるためだというかもしれない。それはたしかにいうまでもない。しかし、すでに理性は、大海原の底深く、永劫の闇のうちをさまよっているのではなかろうか。わたしが、ときに考えるのは、そこだ。わたしの推論がわかるかい?
エストラゴン  うん、人はみな生まれたときは気違いよ。そのまま変わらぬばかもある。
ベケットゴドーを待ちながら』安堂信也・高橋康也共訳より)