「人間のみが老い、その周りですべてが日に日に若返る」(ミュッセ『アンドレア・デル・サルト』より) 徒歩というだけで驚かれる車必須の土地を連日歩き倒す。歩けば歩くほど染み込んで体内で枝を伸ばす。今日は、生まれたての赤ちゃんや、振り子のような牛の尻尾や、背負われたカヌーや、入口も出口もない家や、網戸に力いっぱい顔を押し付けて見送ってくれる兄弟など。机のある5階までいつも階段を使うが、友人は52階を昇り降りしている。慣れないと酔うそうだ。