朝。立派な鯉の主に声をかける。この9匹の鯉と鮒は10年目で、という話から鮎について(苔による成長差や産卵前後の色の変化)や、60年前のこの辺りの様子(仕官舎だらけで住宅はわずかだった)や、ご自身の半生(16で予科練に入り海軍の電波観測特殊任務要員となり三回死に掛け生き延びこの地で商売を始めたが多忙のため20年前にたたみ今はマンション経営で悠々自適の柔道剣道有段者)などをうかがい、道場へ。片手取呼吸法。片手取四方投。6、8の杖合わせ。午後。藤子不二雄車両で雷雨をくぐり劇場に向かい、霞で始まり雷雨で終わる作品に再会する。(茶を飲む。眠り込む。目を覚ます。微笑む。顔を洗う。煙草を吸う。歩く。運転する。話す。眺める。呼吸する。)自分の記憶を辿っているかのように、映されているものすべてが懐かしさに満ちている。些細で穏やかで淡々としたそれらが染み込んで、ゆかしさおかしさはかなさに包まれる。そっと両手の平を天に向け出会えたことにただ感謝したい特別な作品。