「鹿児島のみかんをおひとついかが」と80代のご婦人。「あら、いいんですか?」「待っててね、持ってくるから」いろいろな植木を見ながら、しばらく待つ。「お嬢ちゃん、どうぞ」と渡された袋には拳の3倍ほどの大きさのみかんと、指の先ほどのきんかんと、丸いれもんと、薩摩芋。「桜島の灰がついているけどおいしいのよ、先日生家を解体して、このみかんの木もきんかんの木もれもんの木も伐ってしまったの、毎年実がなっていたのよ、農薬なしでね」「このお芋、すっごくおいしいの、ケーキよりおいしいって驚かれたわ」「そろそろ耳も遠くなるし記憶力も減ってきていて申し訳ないけど、また声をかけてね」そばで猫が陽を浴びている。