準備

感情を無くした部族と2年間過ごした人に会いに行ったことがある。その部族が特殊なわけではなく、極限の状態に順応するために人間に備わっている能力だと思う、とおっしゃっていた。2歳の頃、とりあえず家を出た。今ここにいる、そのことが不思議でならず、ここでないどこかでそのことを観察しようと思ったが、どこかは常に範囲の中であることの確認にとどまった。範囲の外に行く方法がある。「してはならないとされることをせよ」 記憶は失えば失うほどいいと思っていたしそのための努力もした。でも、岩の上で昼寝したり畳の上で昼寝したり床の上で昼寝したり芝生の上で昼寝したことを、覚えている。