圧縮

 サントリーホールミカエル・レヴィナスの「叫び声」(日本初演)。脱出しやすい席を確保するも、演奏が控えめであったためか脳が溶け出すこともなく、続くユーグ・デュフール「水を司る星」(日本初演)と、ジェラール・グリゼー「ヴォルテクス・テムポルム」を堪能。会場を出ると滝のような雨。
 現代美術館のパラレル・ワールドで、内藤礼氏の空間。「信じる」という語の意味を把握できずにいるが、こういうことかもしれないと、ぽかーんと思う。
 所沢ビエンナーレ・プレ美術展「引込線」で、多和圭三氏の新作。正方形の枠状で、もとはひとつであったものが、ふたつになって地面に並んでいる。ひだのように波打つ面と、刃物のような鋭さを持つ。素材は鉄であるが、見落としてしまうほどの儚さは、まるで透明な気体が圧縮されたかのよう。向き合った途端、あらゆる雑音が消え去った。