些細な記憶をひとつずつ掬い上げる。それらは、暴力に押しつぶされることも、奪われることもなく、静かに漂っている。(一昨年の夏。冷淡なイク族を報告する書『ブリンジ・ヌガク』を読んだ我々は、その部族と数年間過ごした人物に会いに行った。イク族のこどもは3歳になると両親の家から追い出される。イク族は人間同士の絆などみじんも信じない。)