どこまでつづくこの暗い。/道だかなんだかわからない。/うたつておれは歩いてゐるが。/うたつておれは歩いてゐるが。
    ・・・
歩いてゐるのもあきたんだが。/ちょいと腰かけるところもないし。/白状するが家もない。/ちょいと寄りかかるにしてからが。/闇は空気でできてゐる。
    ・・・
なんたるくらい底なしの。/どこまでつづくはてなしの。/ここらあたりはどこなのだ。/いつたいおれはどのへんの。/どこをこんなに歩いてゐる。
    ・・・
くらあい天だ底なしの。/くらあい道だはてのない。
草野心平「わが抒情詩」より)