どこまでつづくこの暗い。/道だかなんだかわからない。/うたつておれは歩いてゐるが。/うたつておれは歩いてゐるが。
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歩いてゐるのもあきたんだが。/ちょいと腰かけるところもないし。/白状するが家もない。/ちょいと寄りかかるにしてからが。/闇は空気でできてゐる。
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なんたるくらい底なしの。/どこまでつづくはてなしの。/ここらあたりはどこなのだ。/いつたいおれはどのへんの。/どこをこんなに歩いてゐる。
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くらあい天だ底なしの。/くらあい道だはてのない。
(草野心平「わが抒情詩」より)