メモ(灰)

フリーダは生前の希望通り火葬にふされた。炉から出てきた時、遺骨は少しの間、その骨格をとどめていたという。これを見たディエゴは、上着のポケットから小さなスケッチブックを取り出し、無言でフリーダの銀色の骨格を写しとった。終えると彼はフリーダの灰を静かにかき寄せ、そのひとかたまりを口に入れた。そしてかき寄せた灰をゆっくりと赤い布に包むと、箱にていねいに納めた。ディエゴはこの時、自分が死んだら、自分の灰とフリーダの灰とを粒子のひと粒ひと粒までよく混ぜて一緒にしてくれるよう依頼した。(堀尾真紀子「フリーダ・カーロ」より)