2009-01-01から1年間の記事一覧

我慢

俺は我慢してるさ。我慢できねえこっても、我慢してるさ。これだけ我慢するな、容易なこってねえさ。 ・・・ 誰も何もしてくれるわけじゃねえ。なあもかんも、自分ひとりで我慢しなきゃなんねえさ。我慢ということの中にゃ、なあもかんも入ってるさ。我慢て…

どこまでつづくこの暗い。/道だかなんだかわからない。/うたつておれは歩いてゐるが。/うたつておれは歩いてゐるが。 ・・・ 歩いてゐるのもあきたんだが。/ちょいと腰かけるところもないし。/白状するが家もない。/ちょいと寄りかかるにしてからが。…

DENでぷじブレンド。マレーシア語圏の方は「ふ」を「ぷ」と発音するとか。添えられたピスタチオふたつに、某西瓜糖を思い出す。 月はいつしかうす暗く。 幽霊よりもうす暗く。 しんしん。 しんしん。いまはなんにも見えないよ。 (草野心平「小曲」より)

・・・石に語らせるまでには、それなりの時熟が必要となる。その証拠に、当初、杖は石の表面を上滑りするだけで、それを生へと覚醒させることができない、つまり詩人の言葉はまだ沈黙を貫き通すまでに熟していないため、虚しく沈黙に面壁するのみである。し…

メモ

ニモードで今村仁展。アニータで工藤実・原田みどり展。コバヤシと青羅で安美子展「醒醒・寂寂」。福果で二月空展「かんのん」。ラ・ロンダジルで伊藤環展。ニエプスで内野雅文展「野ざらし紀行」。コニカミノルタで、濱浦しゅう展「霞」、高田玲展、イレー…

私小説

・・・私はこの二十年余の間、ここに録した文章を書きながら、心にあるむごさを感じ続けて来た。併しにも拘らず書き続けて来たのは、書くことが私にはただ一つの救いであったからである。凡て生前の遺稿として書いた。書くことはまた一つの狂気である。(車谷長…

メモ

三省堂書店神保町本店で、「やさしい現代詩」出版の記念企画(12名の詩人たちによる自作朗読とトークのイベント)。森岡書店で、詩の朗読会(中藤毅彦展「ブルガリア」に寄せて、朗読家の岡安圭子氏が、トリスタン・ツァラの詩と、ツァラ研究者築野友衣子…

紫色

石灰とマグネシウムと 割れた野原 なくなった眼球の代わりに、窪みに小虫が跳ねている (野木京子「*」より) 近所の画家Y氏のアトリエではときどき、詩の朗読会が催される。先日そこで、詩人の野木京子さんが小学生の頃につくった詩を聴いた。内容は、紫色…

白痴

神保町シアターで、『白痴』(監督・黒澤明/原作・ドストエフスキー/出演・森雅之、三船敏郎、原節子、久我美子)。

さて、

「さて、これからどうしようか?」 「以前と同じようにする・・・。これからも朝になったら起き、夜になったら寝る、そして、生きていくのに必要なことをやり続けるしかない」 「長いこと続くんだろうなあ」 「たぶん一生のあいだ、ずっとだ」 (アゴタ・ク…

地面

さきほど演奏された、バルトーク「ルーマニア民族舞曲」を反芻しながら、草木が満ちる曲線の道を抜ける。風はなく、葉や草は微動だにしない。ひとけも灯もなく、靴底と地面の接する音だけが耳に届く。

紙袋3

暗い池の中を、光を放つ生物が泳いでいる。水鳥は牛蛙を真似、銅像は背を向ける。駒場東大でインタビュウ・ショウ「my space,のようなので。」(作・演出 河村美雪)。ROBA ROBA cafeで恩塚正二展「さかさましまうま」。福果で谷口明子展「pieces of sheets …

紙袋2

2009年

昨年中は、多大なるご迷惑を、おかけしました。混乱の暴投を受け止め、まっすぐ投げ返してくださった方々。 不信の念に占拠された者に、辛抱強く付き添ってくださった方々。 気力を失した者に、行動の力を示してくださった方々。 特に、事件を解くためにご協…

紙袋1

某大学にて、ある作家を特集したVTRを見せていただく。古い家屋の一室、今にもなだれを起こしかねない状態の書物に囲まれ、片膝を立て座卓で執筆する姿。田園の中を北に向かう電車内、インタビュアーの問いかけに、「自分は最低の奴だ」と静かに答える姿…

記録

東京しごとセンター地下講堂で、映画「ガイサンシーとその姉妹たち」(監督・撮影 班忠義)と、パフォーマンス「melos」(出演 祥子/設計 二瓶龍彦)を観る。60数年前、日本軍から強制的な行いを受けた山西省の山村の女性たち。以来彼女たちの心身は、重…

手を離そう つないでいても何の役にも立たないから 楽しかろうがなかろうが ぼくらは川のように 過ぎ去るんだ それならば 静かに 心を騒がすことなく 過ぎゆくことを覚えよう (リカルド・レイス詩篇/澤田直訳 より)

井戸

息を止め井戸に潜り、底に積もる泥の中から破片を拾いあげる。つなげればひとつのかたちとなるはずの、いくつもの破片を並べ、輪郭を推測する。だが、別の破片を加えた途端、その予測は覆される。破片はそれ自体が何層にもなっていて、どの解釈もずれてしま…

些細な記憶をひとつずつ掬い上げる。それらは、暴力に押しつぶされることも、奪われることもなく、静かに漂っている。(一昨年の夏。冷淡なイク族を報告する書『ブリンジ・ヌガク』を読んだ我々は、その部族と数年間過ごした人物に会いに行った。イク族のこど…

バス

動物園が休みなので、友人がシマウマを真似る。一枚の紙片を頼りに、乗り遅れたバスに乗り込む。着の身着のまま、夜明け前の雪国に着く。落ちたばかりの結晶に足の形を記し、木々と石、空と土の間をめぐる。安心しきって手足の感覚を失くす。歳をとらない日…